(エドガー・アラン・)ポーにとって群衆は野蛮な何かであり、「規律」を受け入れるとしてもそれは表面的である。画家のジェームズ・アンソールは謝肉祭を思わせるような群衆の光景のなかに「軍隊」を描きこんだが、それは群衆が何を代補されるべき存在であ…
こういうことでしょ。 ラカン「現実界」 =天然知能 =意味のない無意味 =野矢茂樹「外部」 =・・・ …あと、なんだろう…
柄谷行人『世界史の実験』(岩波新書)読了。一連の柳田國男に関する論考・エッセイを集めた続編。タイトルの意味が分かると、非常に射程の長く、刺激的な論であることがわかる。 日本近世史でいう「武士と農民の分離」や、インドのカースト制での「身分への…
ナチの犯罪、戦争と敗北の現実は生活の構造全体を覆ったが、ドイツ人は自らにとってショッキングな衝撃をかわすさまざまな工夫をこらしていた、とアーレントは見た。「死の工場の現実性」を他の国民もしうるようなことをしたにすぎないという「たんなる可能…
最近、感情的にはどうしても矛盾するとしか思えない二つの命題をともに仮定しても、それが矛盾しないという証明が出たのです。だからそういう実例をもったわけなんですね。それはどういうことかというと、数学の体系に矛盾がないというためには、まず知的に…
小林 実証精神というのは、そういうものだと思うのだがね。何もある対象に向かって実証的方法を使うということが実証精神でないよ。自分が現に生きている立場、自分の特殊の立場が学問をやるとき先ず見えてなくちゃならぬ。俺は現にこういう特殊な立場に立っ…
積読が積み重なりすぎて困っております。 ①なぜ私は一続きの私であるのか ベルクソン・ドゥルーズ・精神病理 兼本浩祐 ②天然知能 郡司ペギオ幸夫 ③フーコーの言説 慎改康之 はまず今週中に読んでしまわねば。 読者ができたのでまじめに更新していこうという…
機械が私たちを支配する未来よりも、むしろ私たちが機械の水準に近寄っていく未来の方がずっとありうるのである。(p200)
もし退職するまでに、なにかこれからできることがあるとしたら、マロニエの樹をもう一度植えることぐらいかもしれない。地下の展示室の痛ましさに打ちひしがれた人々が、ああ、ほんとうにひどいことだったのだね、黒焦げのあの少年は熱かったろうね、と語り…
今年二月十四日、フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で、銃の乱射によって、十七人の高校生と教職員が亡くなった事件をまだおぼえている。高校生の呼びかけに全米では百万人近くのもの人が集まったともいわれる。ワッペンや…
僕がその赤犬を引いて囲いの入口まで行った時、女子学生が血に汚れた毛皮をさげて出て来た。それを見ておびえた赤犬が暴れるのを運び紐を引き締めて静めようとした僕に赤犬は激しく跳びかかり腿に咬みついた。囲いから出て来た犬殺しがすばやく赤犬を引き離…
epigraph [H]istory has come to a stage when the moral man,the complete man, is more and more giving way, almost without knowing it, to make room for the . . .commercial man, the man of limited purpose.This process, aided by the wonderful p…
ジーン・リース『ウィーン』(引用) 男たちがわたしをだめにした―いつもわたしの心には見向きもせず、身体にばかり執心して。女たちがわたしをだめにした、意味のない残忍さと愚かさで。唯一持っている武器をつかう以外、わたしにはどうしようもなかったじ…
2018.8.31「週刊読書人」書評 上村忠男 ジルベール・シモンドン『個体化の哲学ー形相と情報の概念を手がかりに』 …シモンドンは1950年代当時まだ緒についたばかりの高度産業技術社会の時代にあって、その時代の申し子であるとともにその時代を…
ウォルタ・リップマン『世論』 アレクシス・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
I refuse to accept this. I believe that man will not merely endure: he will prevail. He is immortal, not because he alone among creatures has an inexhaustible voice, but because he has a soul, a spirit capable of compassion and sacrifice a…
國分 ある一定の貧相な基準に合致する人物しか活躍できないような社会はよくない。僕の知る業界だと、例えば大学の人事評価や新任人事のやり方にもエビデンス主義が入ってきていて、五つぐらいの評価枠をつくって点数をつけるというようなことが行われてきて…
「わたしはイルカになった。」 ジャック・マイヨール(素潜り100m) 「そのとき私は山になる。」 ラインホルト・メスナー(8000m級の山に酸素ボンベなし登頂)
「羌族」の人たち 家畜の牛 『わたしを離さないで』のヘールシャムの子どもたち なぜ逆らいもせず殺されるがままなのか? 「文字」によって成立しうる 「時間」という意識が無いから
父は若い歴史学者の報告に注釈を加えるようにして述べている。「……グロテスク。破局への誇り。自分たちがいかに悲惨であるか、彼らにはまだわかっていない。自由のお祭り騒ぎがこれからきっと起こるだっろう」(五月二十八日) マンは性急で苛立っている。ナ…
170826(土) 渡辺京二より酒井若菜様へ「あなたへ往復書簡」 根岸鎮衛『耳袋』/橘南谿『東西遊記』/松浦静山『甲子夜話』 三田村鳶魚『歌舞伎百話』 「政治季評」豊永郁子 17世紀の哲学者ジョン・ロック『市民政府論』 「被征服民の権利」 ロック…
自分の子どもがまだ小さい親たちは、先の話だと思って、知らんぷりを決めこんでいる。子どもが中学生になったら、留学させるつもりでいる親も少なくない。今のところ、まだそんな抜け道が残されてはいる。お金さえあれば、なんとかなるという考え方が、三十…
子どもたちの運動会と言えば、最近、新しい法律をめぐって大騒ぎになっているらしい。中学生の親たちのなかには、どうしたってこんな法律には承服できない、と国会議事堂まで行き、むかしなつかしい座り込みをしているひとたちもいるという。 四、五年前に、…
あらかじめ宿命づけられたこのつつましさ、何ものも願わず何ものにも到りつくまいとするこの欲求、これらが、多くの小説を、何ひとつ非難すべき点のない書物と化し、小説というジャンルをあらゆるジャンルのなかでもっとも好ましいジャンルと化するに足りる…
「綱が邪魔で好きに動けないかもしれん」一同はそうした。犬たちはいまや自由の身となり、三十分後には迷子になった。人間たちが犬を見失ったのではなく、犬たちが人間を見失ったのである。二匹は小川と丘をこえたところにいたので、男たちにはその声がはっ…
ある小太りの占い師があなたには御先祖様の加護があるから一生幸せで、不幸なことになりかけても周りの人が助けてしまい、少なくともプラスマイナス・ゼロになりますと言った通り、てんで幸福で日々の些末な葛藤以外、コミットすべき困難も人生のテーマもさ…
8月6日(日)朝日新聞書評 立野純二評『歴史の逆襲』ジェニファー・ウェルシュ カナダ人学者の著者が今後の指針とみるのは、冷戦期の米戦略家ジョージ・ケナン氏の勧告である。 ソ連に対抗する最高の手段は、軍事力ではなく、自らの社会制度を最善に高めるこ…
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。 愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。 Nur ein Idiot glaubt, aus den eigenen Erfahrungen zu lernen.Ich ziehe es vor, aus den E…
読書とは、一種の時間の循環装置だともいえるだろう。それは過去のために現在を投資し、未来へと関係づけるための行為だ。過去の痕跡をたどりその秘密をあばき、見いだされた謎により変容を強いられた世界の密林に、新たな未来の道を切り拓いてゆくための行…