アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

溝上慎一『現代大学生論』(NHKBOOKS)

引用

 じっくり考えれば恐ろしいことであるが、学生たちを教育するのは、学生たちの現代的な生き方のダイナミックスを自身が経験していないし、もっといえば、彼らの生き方のダイナミックスが自分たちといかに異なったものか考えることの少ない大学教職員である。厄介なことに、教員のなかには、自身の学生時代を範として「良い教育」「理想の教育」を考える人が非常に多い。現代は、いまの大人たちが生きてきた時代とはあまりに違う。旧き良き時代に支えられた、しかも、たかだか一個人の経験が、現代の教育一般にそう単純にあてはまるはずがない。

 もちろん、時代を超えた普遍的な取り組みはあるだろうから、それはそれでいい。しかし、それは結果論であって、教育者や大人は、目前にいる学生の生き方を一度色眼鏡を外して見る努力をし、その上で彼らに必要な教育一般を考えていく必要があるだろう。(p29)