アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

秋田茂『イギリス帝国の歴史 アジアから考える』(中公新書)

 

アジア、現代という視点から、ヘゲモニー国家イギリス帝国の影響力を歴史的に叙述する論考。

帯には、

地球的規模で影響力を行使した「ヘゲモニー国家」が現代に残したものとは何か?グローバルヒストリーの研究成果をふまえて構築する新たな帝国像

世界システムの基盤を作り上げた帝国の意義

とある。

 

序章 現代アジアの経済的再興とイギリス帝国

  (世界のGDPの変容とアジア
  現代インドの経済発展と英印ビジネス関係の変容
  現代イギリス経済の変容―ロンドン・シティの繁栄と多文化主義)
第1章 環大西洋世界と東インド―長期の一八世紀

  (イギリス帝国の起源
  商業革命とイギリス帝国―西インド諸島と北米植民地
  北米植民地とアメリカ独立戦争
  東インド会社とアジア貿易
  イギリス産業革命の歴史的起源と帝国)
第2章 自由貿易帝国とパクス・ブリタニカ

  (旧植民地体制の解体
  自由貿易帝国主義と帝国の拡張―一九世紀中葉の帝国
  ジェントルマン資本主義の帝国―金融と帝国
  ヘゲモニー国家イギリスと近代日本
  イギリス帝国のソフトパワー)
第3章 脱植民地化とコモンウェルス

  (帝国からドミニオンコモンウェルス
    ヘゲモニー国家から構造的権力へ
    脱植民地化の進展とスターリング圏
   パクス・アメリカーナと帝国の終焉)
終章 グローバルヒストリーとイギリス帝国

 

感想:

    高校の世界史で学んだ知識が、イギリスの世界戦略というたて糸を使って編み直される感じを味わうことができた。

    また、グローバルヒストリーの視点から、現在の世界の「ヘゲモニー国家=ルール設定者」が、その都度の歴史的過程(パワーバランス、世界情勢)の中で何を得るために何を捨ててきたのか、も良く分かった。

   自由貿易体制が、より広範な収益の拡大を狙った「形を変えた植民地主義」=「新たな富の収奪システム」であることも示唆された。

   「構造的権力の行使」という概念は初耳。

もっと詳しく書評を読みたい方は、

秋田茂『イギリス帝国の歴史』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

 

 

イギリス帝国の歴史 (中公新書)

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