最近読了したものから
『日本語が亡びるとき(増補版)』水村美苗
◎再々読。読むたびに、とくに読書の時の「書き言葉としての日本語」自体に対する感覚や、読書という行為そのものに対する感覚が変化してきた気がする。しかもそれは必ずしもポジティヴな変化ではない気がする。
とはいいつつも、以下の翻訳小説に少しだけ勇気づけられる気もする。
『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ
◎人間ヒトラーへの共感を感じることは、タブーではない。…が!…
歴史的に彼本人に帰責出来る事柄を十分知った上での共感でなければならない。
そのうえで、正気のまま、共感可能か?
『ヒア・アンド・ナウ(J.M.クッツェー/P.オースター往復書簡)』
◎要再読。二人の作品を片っ端から読みたくなった。とくにクッツェーのものは原書で。
『HHhH プラハ1942』ローラン・ビネ
◎要再読。失われた歴史の時空に想像力で接近し、創造していく行為が小説を書き、読むということなのか。ローラン・ビネと一緒に考える。そこで創造されたものが、実際に過去において「無かった」とはどういうことか。記憶すべきもののなかには、無数の記憶できないもの、知りえないものの海が広がり、島嶼としての記憶可能な領域が歴史の時空の中に点在している。それでもあまりに平板なイメージに過ぎる。