2017-08-03 「大岡信を送る 2017年 卯月」谷川俊太郎 大岡信を送る 2017年 卯月 本当はヒトの言葉で君を送りたくない 砂浜に寄せては返す波音で 風にそよぐ木々の葉音で 君を送りたい 声と文字に別れを告げて 君はあっさりと意味を後にした 朝露と腐葉土と星々と月の ヒトの言葉より豊かな無言 今朝のこの青空の下で君を送ろう 散り初める桜の花びらとともに 褪せない少女の記憶とともに 君を春の寝床に誘うものに その名を知らずに 安んじて君を託そう フクヤマにもこんな気の利いた言葉を送ってやるヤツがいたなら、少しは。