アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

もう「大衆の反逆」見たかい?

エドガー・アラン・)ポーにとって群衆は野蛮な何かであり、「規律」を受け入れるとしてもそれは表面的である。画家のジェームズ・アンソールは謝肉祭を思わせるような群衆の光景のなかに「軍隊」を描きこんだが、それは群衆が何を代補されるべき存在であるのかを、すなわち全体主義へ移行する危うい道筋があることを暗示していた。

 ポール・ヴァレリーは、文明史的な観点から、大都市の住民はかえって野生状態、すなわち孤立状態に逆戻りするという。なぜなら社会的な機構の完備は、かつては必要上たえず呼び覚まされていた、諸個人の絆にもとづく感情を失わせ、共同生活に対する態度や感受性や行為の様式を無効にしていくからである。ヴァレリーは、大都市を生きる人間のなかに、便利な社会機構への依存と表裏をなすように、一種の「野生状態」や「孤立状態」への逆戻りが見られるのを感じ取っていたのである。

内田隆三社会学を学ぶ』(ちくま新書)p227より)

 

つづく