「名付けられないもの」として父祖たちが持っていた敬虔さを失った“我ら”
一般に、人が異教を排撃するのは、自らの宗教を熱烈に信じるからだと考えられるが、実は、そのような所ではむしろ、異教に対して寛容である。異教を排撃するのは、自らの宗教を信じていない時である。トッドの考えでは、フランスに反イスラム主義が生まれたのは、カトリックが衰退してしまったからだ。私は自分の信じていた宗教を冒涜する、ゆえに、他人の宗教を冒涜する権利と義務がある、と彼らは考える。
(書評)『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』 エマニュエル・トッド〈著〉 〈評〉柄谷行人(哲学者)