アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大澤真幸『社会学史』からの孫引き

人がある状況を現実と定義すると、その状況はその結果として現実となる。 (ドロシー・スウェイン・トマス『アメリカの子ども』より) その効果に知らぬまま巻き込まれた多くの人たちは、ますます現状の肯定を繰り返し強化し、自分の不幸を倍加してしまうか…

ボルヘス、オラル

九世紀の詩を読み返した時に、その詩を作った人と同じような気持ちになれさえしたらそれでいいのだ。その瞬間、九世紀の名も知れない詩人がわたしのなかに蘇るのである。もちろん、わたしはすでに死んでいるその詩人ではないが。われわれ一人ひとりは、なん…

「懐かしい年への手紙」読解

小説を結末まで読み切り、またすぐさまもう一度冒頭にもどって、そこから起こった事柄のいちいちに、ああそういう意味だったのか、とか、あああの出来事とそうつながっていたのか、と全体を見渡すことができる視点からもう一度読んでいく。それと同じように…

カール・クラウスの言葉に思う

言葉にしゃべらされている人たちが、圧倒的多数でこの社会を構成していて、どんなローカルな場所にでも、それぞれ紋切り型の常套句を交わしあい、安心感を得て、わが麗しの故郷と安寧な生活に満足している。しかしその安心感は、実際にはどんな安全も保障し…

読書について

もしかしたら、私たちの少年時代の日々のなかで、生きずに過ごしてしまったと思い込んでいた日々、好きな本を読みながら過ごした日々ほど十全に生きた日はないのかもしれない。他の人たちにとってはそれらの日々を満たすように思えたものすべて、しかし私た…

友情について

とはいえ、楽園で一日をすごすこの楽しみのために、社交場の楽しみのみならず友情の楽しみまで犠牲にしたとしても、あながち私の間違いとは断定できない。自分のために生きることのできる人間は―たしかにそんなことができるのは芸術家であり、ずいぶん前から…

俯瞰について 雑感めも

空間的な俯瞰というものは、地図やグーグルマップを使ったり、動画で太陽系の大きさとか、銀河の広さを体感させるような映像を見ることができるので、割と把握しやすい。だれでもがイメージ化できる、とまではいわないが、これは、空間を空間的イメージに置…

「コルヴィッツ通り」多和田葉子

・・・子供は親のすべての表情、仕草、言葉を最終的には解釈できないままに記憶し、夜空のように肩に背負って歩いていく。 たしかにそうだと思う。 自らある程度年をとってからちりばめられた星と星をつなぐように記憶の断片をつないで、柄杓や熊のかたちを…