アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

170826(土)渡辺京二より

170826(土) 渡辺京二より酒井若菜様へ「あなたへ往復書簡」 根岸鎮衛『耳袋』/橘南谿『東西遊記』/松浦静山『甲子夜話』 三田村鳶魚『歌舞伎百話』 「政治季評」豊永郁子 17世紀の哲学者ジョン・ロック『市民政府論』 「被征服民の権利」 ロック…

津島佑子『半減期を祝って』(2)

自分の子どもがまだ小さい親たちは、先の話だと思って、知らんぷりを決めこんでいる。子どもが中学生になったら、留学させるつもりでいる親も少なくない。今のところ、まだそんな抜け道が残されてはいる。お金さえあれば、なんとかなるという考え方が、三十…

津島佑子『半減期を祝って』(1)

子どもたちの運動会と言えば、最近、新しい法律をめぐって大騒ぎになっているらしい。中学生の親たちのなかには、どうしたってこんな法律には承服できない、と国会議事堂まで行き、むかしなつかしい座り込みをしているひとたちもいるという。 四、五年前に、…

「小説」について(1‐1「想像的なものとの出会い」モーリス・ブランショ『来るべき書物』粟津則雄訳)

あらかじめ宿命づけられたこのつつましさ、何ものも願わず何ものにも到りつくまいとするこの欲求、これらが、多くの小説を、何ひとつ非難すべき点のない書物と化し、小説というジャンルをあらゆるジャンルのなかでもっとも好ましいジャンルと化するに足りる…

「犬どもを放してやれ」と保安官は言った。(フォークナー『八月の光』諏訪部浩一訳(岩波文庫))

「綱が邪魔で好きに動けないかもしれん」一同はそうした。犬たちはいまや自由の身となり、三十分後には迷子になった。人間たちが犬を見失ったのではなく、犬たちが人間を見失ったのである。二匹は小川と丘をこえたところにいたので、男たちにはその声がはっ…

『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』「結婚と井戸掘り」 ある小太りの占い師が…

ある小太りの占い師があなたには御先祖様の加護があるから一生幸せで、不幸なことになりかけても周りの人が助けてしまい、少なくともプラスマイナス・ゼロになりますと言った通り、てんで幸福で日々の些末な葛藤以外、コミットすべき困難も人生のテーマもさ…

軍事力ではなく自らの社会制度を最善に高めること

8月6日(日)朝日新聞書評 立野純二評『歴史の逆襲』ジェニファー・ウェルシュ カナダ人学者の著者が今後の指針とみるのは、冷戦期の米戦略家ジョージ・ケナン氏の勧告である。 ソ連に対抗する最高の手段は、軍事力ではなく、自らの社会制度を最善に高めるこ…

キミたちは自分で経験しなければ分からないほどのバカか?

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。 愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。 Nur ein Idiot glaubt, aus den eigenen Erfahrungen zu lernen.Ich ziehe es vor, aus den E…

『本は読めないものだから心配するな』菅敬次郎

読書とは、一種の時間の循環装置だともいえるだろう。それは過去のために現在を投資し、未来へと関係づけるための行為だ。過去の痕跡をたどりその秘密をあばき、見いだされた謎により変容を強いられた世界の密林に、新たな未来の道を切り拓いてゆくための行…

「ベルリンの奇異茶店から世界へ」多和田葉子/堀江敏幸 対談(「新潮」2017.7)

非在としてのアジア 堀江 多和田さんは、朗読会やシンポジウムなどで、よくドイツの外に出られますが、日本に帰ってくるとき、他とちがう思いはありますか。 多和田 日本に着くとすごく嬉しいんですが、でもこの日本は私が帰りたい日本とちょっと違うなとい…

木下順二「子午線の祀り」知盛のセリフ(池澤夏樹「終わりと始まり」170805より)

木下順二はこの芝居の主題を、運命は天が決めるか否かに置いている。知盛は問う―「負け戦さ―わが子武蔵守知章を眼前に見殺しにして逃げたこと―馬を敵の手に放ったこと―その一つ一つが、すべてはそうなるはずのことであったといま思われるのはどういうことだ…

After the first death, there is no other.

A Refusal to Mourn the Death, by Fire, of a Child in London Never until the mankind making Bird beast and flower Fathering and all humbling darkness Tells with silence the last light breaking And the still hour Is come of the sea tumbling …

蜂飼耳「松浦理英子『最愛の子ども』」書評より 恋愛?友情?友愛?いいえ…

世の中には恋愛や友情や友愛といった言葉があって、誰でも使うことができる。けれど、人と人との関係をじっと見つめるなら、どれも恐ろしいほどに唯一のものであり、本来的には名付けることなどできはしないのだと気づく。 (中略) …名付けることのできない…

「大岡信を送る 2017年  卯月」谷川俊太郎

大岡信を送る 2017年 卯月 本当はヒトの言葉で君を送りたくない 砂浜に寄せては返す波音で 風にそよぐ木々の葉音で 君を送りたい 声と文字に別れを告げて 君はあっさりと意味を後にした 朝露と腐葉土と星々と月の ヒトの言葉より豊かな無言 今朝のこの青空の…

漸進主義は現代医療のヒーローだ1 アトゥール・ガワンデ

医療に対して、私たちはヒーローに対するのと同じような期待を抱いている。第二次世界大戦後、ペニシリンなど山ほどの抗生物質が、それまで神の手によるしかないと思われていた細菌性疾患の災禍を克服した。新しいワクチンがポリオやジフテリア、風疹、麻疹…