アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

2015-01-01から1年間の記事一覧

八月六日無数の惨めさに向き合う

黙示録的意味や歴史的意義は必要としない人たちと 婉曲な表現をするのはよそう。その日の午後へ向かう。躰は大火傷でケロイド、なけなしの平穏である隣人たちと垂れ下がる皮膚を見せ合い言葉もない。何より自ら産み育ててきた子どもが生焼けで泣く力もなく蹲…

古井由吉 半自叙伝

2015年7月7日朝日新聞 随筆と小説の間で 古井由吉さんの短編集「雨の裾」 (略) 新しさを求めて技術革新が進む社会にあらがうように、自身に積もる「時」を語る。 (中略) 語られる時間は自在に行き来し、空間も現代、過去、未来が重なり合う。 「よく知っ…

関係の絶対性

関係の絶対性において、政治にかかわることができない一般庶民に加害性を押し付けることは、たとえば無差別空爆や大量虐殺などの行為に対する正当性を生み出す視点なのではないか。私たちや、あるいは私たちの子どもたちに、アフリカの貧困に対する責任があ…

最近読了したものから

『日本語が亡びるとき(増補版)』水村美苗 増補 日本語が亡びるとき: 英語の世紀の中で (ちくま文庫) 作者: 水村美苗 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/04/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る ◎再々読。読むたびに、とくに読書の…

「想定外のことが起こらない限り、絶対に安全です」・・・多和田葉子「彼岸」

今日かもしれない、明日かもしれない、百年後かもしれない…というのは、正直キツイ… それならいっそ、「再稼働」グループと「想定外に備える」グループの落としどころを探り、「支援計画を整備しよう」と言われたとしても、「再稼働」への表立っての批判は期…

阿部昭「短編小説礼賛」(15京都大1)

チェーホフが、彼に恋した作家志望の人妻アヴィーロワに語ったという「生きた形象から思想が生まれるので、思想から形象が生まれるのではない」という言葉 『ドゥルーズの哲学』での「思考の受動性」に通じる。 自発的に考えていると感じる場合にも、ひとは…

『ピアノを弾く哲学者 サルトル、ニーチェ、バルト』 フランソワ・ヌーデルマン

音楽が孕む時間と感情は、言語を経由しない質のものである。 サルトルは政治的な闘争をたたかいつつ、哲学書や小説を執筆し、それと同時に人生を通じてピアノ演奏する時間を手放さなかった。それは彼に社会的な生とは異なる時間、異なる感情生活を与えるもの…

『ジャッキー・デリダの墓』 鵜飼哲

「絵画とは、人間を、おのれ自身の中および外の恐るべき力、運命、自然と対決させる冒険である。」 ジャン=ミシェル・アトラン(「絵画に〈声〉が来るとき」より) この引用部分の冒頭、「絵画」の部分を、「音楽」や「文学」と変えても同様の意味を表わす…

朝日新聞 論壇時評 寛容への祈り 「怪物」は日常の中にいる 高橋源一郎

田原(牧)は、こうも書いている。 「彼らがサディストならば、ましだ。しかし、そうではない。人としての共感を唾棄し、教養の断片を無慈悲に現実に貼り付ける『コピペ』。この乾いたゲーム感覚ともいえるバーチャル性が彼らの真髄だ。この感覚は宗教より、…

オルハン・パムク『雪』(ハヤカワepi文庫)

雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫) 作者: オルハンパムク,宮下遼 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2012/12/07 メディア: 文庫 クリック: 2回 この商品を含むブログ (3件) を見る 王侯やブルジョアに対する恥辱、宗主国や欧米に対する、アメリカに対す…

「自己責任」ということばの意味とわたしたちの自画像

このような状態で亡くなった人に対して「自己責任」という言葉を吐く人間の価値。なにを生み出すにしろ、何を維持していくにしろ、人間としての品性=信頼性に資する発言ではない。発想の貧困を思う。それがひとつ。そういう人間を生み出しているわれわれに…

数学とは

形式的な整合性の中で成り立っているバーチャルな世界の秩序は、ただ利用されることで有用性や意味(価値)を持つ無意識のようなもので、それ自体の価値を確立する境位を持たない。これは観念的に扱われる世界そのものにも適用可能なルールであるか。 現代の…