オルハン・パムク『雪』(ハヤカワepi文庫)
王侯やブルジョアに対する恥辱、宗主国や欧米に対する、アメリカに対する恥辱。を、散文的に表現するとどうなるかの実験だった。誇り高い者としての自己=デフォルト…
ある油断しきったいつもと変わらぬ朝、太陽と同じエネルギーをもった灼熱の炎を浴びせられた場合の恥辱…
自然の波に押しやられる場合の自分の見通しの甘さに対する後悔の念…との差
見通しの甘さ、粗忽、軽挙、
もちろん熟考している時間的余裕もなく、そうでなかった場合と比較対照するような選択肢もなく、現状に対する情報さえ不十分にしか与えられていない状況で、最適の行動だけが要求されていたとしたなら。それのみが自分を生きながらえさせるとしたなら。
そのようなスキルを身に付けることは誰にもできないはずだが、結果的に失敗した者は、悲しみとともに「失敗した者」と呼ばれることとなる。