2019-04-14 ボルヘス、オラル 九世紀の詩を読み返した時に、その詩を作った人と同じような気持ちになれさえしたらそれでいいのだ。その瞬間、九世紀の名も知れない詩人がわたしのなかに蘇るのである。もちろん、わたしはすでに死んでいるその詩人ではないが。われわれ一人ひとりは、なんらかの形で、すでに死んでしまったすべての人間なのである。ここにいうすべての人間とは、血の繋がっている先祖だけを指すものではない。 『ボルヘス、オラル』五九―六〇頁