アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

『社会学を学ぶ』つづき ル・ボン

 ギュスターヴ・ル・ボンは、群衆の台頭する時代を破壊と混乱の相で見ていた(『群集心理』)。ル・ボンは、群衆のなかに、個人の心理や判断力を超えた一つの集団的な心理の成立を見る。ル・ボンによれば、この群衆の心理は、衝動的で興奮しやすいこと、暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じること、感情が誇張され単純であること、偏狭で横暴で保守的であることなどを特徴としている。群衆は理性によって動かされず、「心象」に基づいて思考し、しかもこの心象は相互に何の連絡もなく、相次いで生じるという。ル・ボンも群衆の出現に野蛮な混乱状態への回帰を見ていたが、同時に彼は、群衆の力が老朽期に入った文明の「破壊作用」として機能するという視点を持っていた。

内田隆三社会学を学ぶ』(ちくま新書)「第8章ヴァルター・ベンヤミン」p228より)

  オルテガ『大衆の反逆』の「大衆」の定義へとつながっていく視点であり、現代の「ポピュリズム」の問題を考える上で(つまり、自分たちの周囲の生活環境について考えるときにも)不可欠の概念と考えられる。

 

 都市住民の無個性化、非個性化、〈昆虫〉化への納得のいく考察でもある。

 

つづく