アタマの中と世界を結ぶ 東山とっとりとりとめない記録鳥

人生五十年下天の内を比ぶれば、残り七年強。

天皇と人間 先崎彰容(1) 

 ベンヤミンは法のもつ虚偽を暴くこと、これを「純粋な暴力」による革命と呼んでいる。善悪の基準、あるいは何が絶対的に正しいかは、あらかじめ決まっているわけではない。そういった秩序のがんじがらめから解放され、無政府的な状態を祝祭しつつ、生きるべきなのだ。あたかも祭りの日の治外法権のように、日常から非日常へ、否、その区別さえぶっ壊し非日常が常態となるような永久革命の世界を創ろうではないか。「国家」もそうだ。国家は僕らから活力ある生を奪う。つねに境界線を引き僕らを隔離し、同時に他人を排除しようとする。つまり国境をつねに乗り越えること、流動性こそが革命なのである。(「天皇と人間―坂口安吾和辻哲郎」先崎彰容19年06月『新潮』)

 社会システムや国家システムの底意、つまりその受益者がなにを求めているのかが隠された状態で引かれた境界線は、「僕ら」を決まった牧草地へと導く小径へと誘い込み、それだけが唯一正しい牧草地であり、正しき糧であると「僕ら」に教え込む。そしてまた「僕ら」ときたら、それをわざわざ教えられた通り実行できることを競い合って誇らしげなのだ。大いにあざけられるべきものたちがそのあざけるべき者たちを嗤っている。